軌跡と覚書

神学と文学を追いかけて

福音主義終末論についての覚書(5)新天新地の性質

前書き

  • キリスト教神学の終末論は以下のように二分されて論じられることが多いです。
    1. 個人的終末論(personal eschatology)→個々人の未来や死、中間状態、復活、裁きなどを扱う。
    2. 宇宙的終末論(cosmic eschatology)→キリストの再臨、千年王国、最後の裁き、新しい天と新しい地などを扱う。「一般的(general)終末論」や*1、「預言的(prophetic)終末論」と呼ばれることもある*2
  • このシリーズでは、上記の二区分でいえば「宇宙的終末論」に焦点を絞り、テーマ別に諸見解を整理していきたいと思います。
    1. イスラエルと教会の関係に基づく諸見解
    2. 聖書預言の成就のタイミングに基づく諸見解
    3. キリストの再臨と千年王国の関係に基づく諸見解
    4. キリストが聖徒を空中に引き上げるタイミングに基づく諸見解
    5. 新しい天と新しい地の性質に着目した諸見解(←今回)
  • 各見解は出来る限り支持者による文献に基づいて整理し、聖書的・神学的根拠を提示しています。ただし必ずしも、各見解の支持者がすべての根拠に同意しているとは限らないことにご留意ください。
  • 参考資料は筆者が所持している、またはアクセスしたことのあるものに限られているので、テーマや見解によって文献量にバラつきがあることはご容赦ください。
  • このシリーズのノートは、各立場がどういう前提や条件で出力された結果なのかを知ることで、自分と異なる立場も出来る限り理解していきたいと考え、整理してきたものです。これからのノートをご覧になる方が、各見解を概観する際の一助になれば幸いです。

目次

※特に断りがない限り、聖書引用は以下によります。聖書 新改訳2017 ©2017 新日本聖書刊行会

5.新しい天と新しい地の性質に着目した諸見解

総論

(1)基本的な前提
  • イザヤ65章、Ⅱペテロ3:13、黙示録21–22章では、やがて「新しい天と新しい地」(以下「新天新地」)が到来すると言われています。イザヤ書や黙示録を読むと、新天新地は、現在の世界とは全く異なる理想的な世界のようです。
  • 福音主義の終末論では、現在の天地から新天新地への変化の仕方について、見解が分かれています。
    • 現在の被造世界が一度消滅してから新しく造り直されるのか?
    • 現在の被造世界は消滅せず、刷新されて新天新地へ変化させられるのか?
  • 新天新地を扱うⅡペテロや黙示録の箇所においては、以下のとおり、現在の天地の破壊を示唆するようなことが書かれています。そうした記述の解釈によって、新天新地への至り方の理解が異なってきます。
    • Ⅱペテ3:10「天は……消え去り、天の万象は焼けて崩れ去り、地と地にある働きはなくなってしまいます。」
    • 黙20:11b「地と天はその御前から逃げ去り、跡形もなくなった。」
    • 黙21:1「また私は、新しい天と新しい地を見た。以前の天と以前の地は過ぎ去り、もはや海もない。」
(2)各見解における共通理解
  • 新天新地は罪・死・嘆き・のろいが取り除かれ、神が人とともに永遠に住まわれるという最終的な回復が実現する世界です。
  • 創世記1–2章で始まった「神が人とともに住まわれる世界」は、黙示録21–22章で回復され完成します。
  • 人の復活は、新天新地をもって完成する「新しい創造」の一面です。よって、人の復活と世界の刷新(新天新地)の間には、何らかの相関関係があると考えられます。
  • どちらの立場でも、神こそが最高の主権者であり、新天新地は必ず到来すると堅く信じられています。

5−1.Annihilation-Recreation View(消滅・再創造説)

(1)定義
  • 終わりの時に現在の天地は神の裁きによって完全に消滅し、その後、神が全く新しい天地を創造されるとみなす見解のことです。
(2)主な特徴
  • 新天新地に関して、現在の天地が修復されたものというよりも、古い天地とは区別される全く新しい天地と理解されます。
  • 現在の天地は罪とその影響に支配されているため、全体が取り除かれての再スタートが必要だと理解されることが多いです。
  • 現在の天地の消滅は、神の聖性と神の裁きの完全さを強調するものと理解されます。
(3)聖書的・神学的根拠の例
  • 黙示録20:11b「地と天はその御前から逃げ去り、跡形もなくなった」と同21:1b「以前の天と以前の地は過ぎ去り」といった記述では、現在の天地の終焉と消失が意図されていると考えるのが自然な解釈だと理解されます。
  • Ⅱペテロ3:10bで「天は……消え去り、天の万象は消えて崩れ去り、地と地にある働きはなくなってしまいます」という記述は、現在の被造世界の完全な消失が意図されていると考えるのが自然な解釈だと理解されます。
  • Ⅱペテロ3:13では「新しい天と新しい地」の到来が教えられており、直前の10, 12節で現在の天地の滅びが言及されています。よって、新天新地は現在の天地が消失した無から再創造される世界であると理解されます。
  • イザヤ65:17aの記述「わたしは新しい天と新しい地を創造する」には、神が「天」(シャマイーム שָׁמַיִם)と「地」(エレツ אֶרֶץ)を「創造する」(バーラー בָּרָא)といった創世記1:1と共通する語が含まれています。よって、新天新地も現在の天地と同様に無から創造されるものと理解されます。また同節b「先のことは思い出されず、心に上ることもない」という記述は、古い被造世界が完全な終了を迎えることの根拠と理解されます。
  • 詩篇102:25–26; マタイ24:35など、現在の天地が滅びることは随所で示唆されていると理解されます。
  • 新約で「新しい天と新しい地」や「新しい創造」などに使われるギリシャ語形容詞カイノス(καινός)は質的な新しさを強調する語と理解されます。それゆえ、新天新地が全く新しく創造された本質的に異なる被造世界であるという理解は、その天地がカイノスによって表現されていることと調和すると考えられています。

5−2.Renewal View(リニューアル説)

(1)定義
  • 神は裁きを通して現在の天地をきよめ、罪と罪の影響が一掃された新しい天地へ刷新されるとみなす見解のことです。
(2)主な特徴
  • 消滅・再創造説とは異なり、裁きの時に現在の天地が完全に消滅するとは考えていません。
  • 新天新地と肉体の復活は、ともに「新しい創造」に属する概念であることから、復活との比較から古い天地と新しい天地の「連続性」と「変容」の両方が強調されます。
    • イエスの復活→栄光の姿へ変容していたが、イエス本人だと認識可能だった。
    • 人の復活→古い肉体とは質的に異なる栄光の身体だが、本人の身体としての連続性があるものと想定される。
    • 新天新地→古い天地が栄化されるものとして変容の要素も大きいが、復活の身体のように古い天地との連続性があることも考えられる。
  • 終末的な希望は「回復の時」(使徒3:20)や、被造物が「滅びの束縛から解放され」ること(ロマ8:21)と表現されています。
(3)聖書的・神学的根拠の例
  • 黙示録20:11bにある「逃げ去り、跡形もなくなった」という表現は、ヨハネが見た幻の中で天地が見えなくなった、または単に幻の舞台が切り替わったことを示すというのが自然な解釈だと理解されます。
  • 黙示録21:4によれば、神の民の涙がぬぐい取られること、また「もはや死はなく、悲しみも、叫び声も、苦しみもない」ことが「以前のものが過ぎ去った」ということの意味だと考えられます。よって、21:1「以前の天と以前の地は過ぎ去り」は、天地の物理的消滅ではなく、罪が残る古い秩序の終わりを意味しているものと理解されます。
  • Ⅱペテロ3章では、やがて到来する火による裁き(7, 10–13節)がノアの時代の洪水による裁き(6節)と対比されています。洪水の裁きは世界の消滅をもたらしたものではないため、火による裁きの役割も天地にある特定の要素(罪とその影響)を取り除くことだと理解されます。
  • Ⅱペテロ3:10の「天の万象」は「自然界の諸要素」(協会共同訳)とも理解できます。裁きによって滅ぼされるのは「諸要素」であり、被造世界全てとは限らないものと考えられます。
  • Ⅱペテロ3:10の「(地と地にある働きは)なくなってしまいます」(アパニスセーソンタイ αφανισθησονται)は、別の写本では「暴かれます」または「明らかにされます」(ヒューレセーセタイ εὑρεθήσεται)とされており、いくつかの英語訳では後者の読みが採用されています(NRSV, NET, ESV, CSBなど)。後者の場合、裁きの時には人々の行いが明らかにされることを意味しているものと考えられ、地の消失の根拠とは理解されません。
  • イザヤ65–66章や黙示録21–22章での新天新地は、理想的ではあるものの現在の天地と共通する要素もある世界として描写されています。よって、新天新地は現在の天地が栄光の姿へ刷新される世界だと理解されます。
  • 使徒3:20では、やがて来るのは「回復の時」(使徒3:20)と表現されています。また、ローマ8:21では被造物がやがて「滅びの束縛から解放され」ると言われています。こうした表現は、被造世界の消失という概念とは調和しないものと理解されます。
  • 神は現在の天地を創造された際に「それは非常に良かった」と判断されました(創1:31)。コロサイ1:15–20では、キリストにあって造られた万物が、キリストの血によって和解させられると教えられています。こうした創造と終末の関係性の記述には、現在の天地の消失という概念は見出されないと理解されます。

雑感

当初、本シリーズの冒頭では「永遠の状態の性質」というテーマで「Spiritual Vision Model」(SVM)と「New Creation Model」(NCM)の2見解を扱おうと構想していました。これらの概念の区分はクレイグ・ブレイジング(Craig Blaising)が提唱したものです*3。SVMというラベルは霊と物質の二元論的理解を強調する見方に対して使われます。信者が永遠を過ごす場所は神がいる「天国」という完全に霊的なところであり、永遠に至った信者はもはや何の変化も経験せず直接神を「知る」という状態が終わりなく続いていくという見方が、SVMというラベルで括られています。一方のNCMは、永遠の状態での信者は復活の「体」をもって新しい「地」という物質的な場所で過ごすという理解を持ち、永遠の状態の霊的な側面だけではなく物質的な側面も捉えようという立場を括るラベルです。

しかし考えてみると、まずこれらのラベルの使用自体が必ずしも福音主義神学で広範に認められているわけではありません。現在のところ、ブレイジングやマイケル・ヴラック(Michael Vlach)のようなNCMを支持する学者陣が、自分たちの考えを他の見解から区別しようとして使っているのが主です。それに、SVMとNCMというテーマは個人的終末論にも深く関わっているため、宇宙的終末論にフォーカスを当てようという趣旨が少々ぼやけてしまう懸念もありました。あとはそもそも、SVMとして括られる見解を整理しようにも手元にある資料が少なく、公平な形で紹介するには時間をかけて勉強する必要を感じたため、今回は断念しました。

本稿のテーマは、宇宙的終末論という分野では、これまでの4テーマほど目立つ分かりやすいトピックではないかもしれません。しかし、現在の天地が消失して新天新地が登場するのか? 現在の天地が新天新地へと変えられる(栄化される)のか? という議論は、第二ペテロや黙示録を解釈する際に、また組織神学で終末論を論じる際に、時折見られるものです。この回も、何かのお役に立てれば幸いです。

参考文献

終末論全般

  • Berkhof, Louis. Systematic Theology. Edinburgh: The Banner of Truth Trust, 1958.
  • Bingham, D. Jeffrey and Glenn R. Kreider, eds. Eschatology: Biblical, Historical, and Practical Approach. Grand Rapids: Kregel, 2016.
  • Enns, Paul. The Moody Handbook of Theology. Revised and expanded edition. Chicago: Moody, 2014.
  • Grudem, Wayne A. Systematic Theology: An Introduction to Biblical Doctrine. Second edition. Grand Rapids: Zondervan, 2020.
  • MacArthur, John F., and Richad L. Mayhue, eds. Biblical Doctrine: A Systematic Summary of Bible Truth. Wheaton, IL: Crossway, 2017.

総論

5−1.Annihilation-Recreation View(消滅・再創造説)

  • Constable, Thomas L. “Notes on Revelation.” 2025 edition. Note on Rev 21:1.
  • Fruchtenbaum, Arnold G. The Footsteps of the Messiah: A Study of the Sequence of Prophetic Events. Second edition. San Antonio, TX: Ariel Ministries, 2003.(※特にpp. 513, 523–24)
  • Garland, Tony. A Testimony of Jesus Christ: A Commentary on the Book of Revelation. 2 volumes. Camano Island, WA: SpiritAndTruth.org, 2004. Note on Rev 21:1.
  • Morris, Leon. Revelation: An Introduction and Commentary. Tyndale New Testament Commentary. Downers Grove, IL: InterVarsity, 1987.(※特にpp. 228, 232)
  • Osborne, Grant R. Revelation. Baker Exegetical Commentary on the New Testament. Grand Rapids: Baker, 2002.(※特にpp. 730, 736–37)
  • Thomas, Robert L. Revelation 8–22: An Exegetical Commentary. Chicago: Moody, 1995.(※特にp. 440)
  • Walvoord, John F. The Revelation of Jesus Christ. Chicago: Moody, 1966. Note on Rev 20:11.

5−2.Renewal View(リニューアル説)

  • Beale, G. K. The Book of Revelation. New International Greek Testament Commentary. Grand Rapids: Eerdmans, 1999.(※特にp. 1040)
  • Collins, Brian. “New-Creation Millennialism: A Response to Thomas R. Schreiner (and G. K. Beale) and a Proposal.” Paper presented at Bible Faculty Summit 2024.
  • Emerson, Matthew Y. “Does God Own a Death Star? The Destruction of the Cosmos in 2 Peter 3:1-13.” Southwestern Journal of Theology 57/2. Spring 2015: 281–93.
  • Heide, Gale Z. “What is New About the New Heaven and New Earth? A Theology of Creation from Revelation 21 and 2 Peter 3.” Journal of the Evangelical Theological Society 40/1. March 1997: 37-56.
  • James, Steven L. New Creation Eschatology and the Land: A Survey of Contemporary Perspectives. Eugene, OR: Wipf and Stock, 2017.
  • McClain, Alva J. The Greatness of the Kingdom: An Inductive Study of the Kingdom of God. Winona Lake, IN: BMH, 1959.(※特にp. 510)
  • Svigel, Michael J. “Extreme Makeover: Heaven and Earth Edition––Will God Annihilate the World and Re-Create It Ex Nihilo?” Bibliotheca Sacra 171. October–December 2014: 407–17.
  • Vlach, Michael J. The New Creation Model: A Paradigm for Discovering God’s Restoration Purposes from Creation to New Creation. Cary, NC: Theological Studies Press, 2023.
  • ________. He Will Reign Forever: A Biblical Theology of the Kingdom of God. Silverton, OR: Lampion Press, 2017.(※特にpp. 509–15)
  • Wall, Robert W. Revelation. Understanding the Bible Commentary Series. Grand Rapids: Baker, 1991.(※特にp. 247)

*1:Grudem, Systematic Theology, 1343.

*2:MacArthur and Mayhue, Biblical Doctrine, 829.

*3:Craig A. Blaising, "Premillennialism," in Three Views on the Millennium and Beyond, ed. Darrell L. Bock (Grand Rapids: Zondervan, 1999), 160ff. 参照:Vlach, The New Creation Model; idem, "The New Creation Model."