軌跡と覚書

神学と文学を追いかけて

聖書における「イスラエル」の意味(7)ローマ人への手紙11:26について:その2

 前回から、ローマ人への手紙11:26の「全イスラエルが救われる」ということの意味を考えてきています。

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 今回はその続きとなります。トピックは以下の通りです。

  • 3.新約聖書における「イスラエル」の意味(続き)
    • 3–3.ローマ人への手紙11:26(続き)
      • 前回からの流れ
      • 3–3–3.11:25-26に時系列的順序は見られるか
      • 3–3–4.「異邦人の完成のなる時」と「全イスラエルの救い」
      • 3–3–4.まとめ
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聖書における「イスラエル」の意味(6)ローマ人への手紙11:26について:その1

 前回の記事(↓)に続き、新約聖書における「イスラエル」の意味について議論が分かれている箇所について考察していきます。

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 今回から2、3回連続で、ローマ人への手紙11:26の「全イスラエルが救われる」という句の意味について考えてきます。
 トピックは以下の通りです。

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聖書における「イスラエル」の意味(5)ローマ人への手紙9:6について

 前回では、新約聖書での「イスラエル」の登場箇所を示し、そのほとんどの箇所において旧約聖書の「イスラエル」の(民族的イスラエルという)基本的意味からは逸脱していない、ということを確認しました。

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ですが、その中には「いくつかの議論が分かれる箇所」が存在しています。今回はそのひとつとして、まずローマ人への手紙9:6について考察していきたいと思います。

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聖書における「イスラエル」の意味(4)新約聖書での「イスラエル」の登場箇所

 前回(2)〜(3)までは、旧約聖書における「イスラエル」の意味を論じてきました。

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 そこで分かった旧約での「イスラエル」の用法は、以下の4つにまとめることができます。

  1. ヤコブの別称
  2. ヤコブの子孫である民族
  3. その民族から成る国家/王国
  4. (例外的に)メシア的人物

そして、旧約全体のナラティヴにおける「イスラエル」という存在は、2. および3. の意味をもって定義される*1ということを確認しました。
 今回からは、数回連続で「新約聖書における『イスラエル』の意味」を論じていきます。初回では、まずは新約聖書で「イスラエル」という用語が使われている箇所を確認していきましょう。

*1:Fruchtenbaumは、「イスラエル」という用語を「イスラエルという用語は神学的にはアブラハム、イサク、ヤコブのすべての子孫を示す」と定義しています(Arnold G. Fruchtenbaum, Israelology: The Missing Link in Systematic Theology, Revised ed. (Tustin, CA: Ariel Ministries, 1993) 2)。

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聖書における「イスラエル」の意味(3)

 聖書における「イスラエル」の意味を探っていこうとするシリーズの第3回目です。
 前回はモーセ五書〜バビロン捕囚以降に至るまでの「イスラエル」の意味を旧約聖書から調べていきました。その結果、この用語は最初使われたときはヤコブの別称でしたが(創32:28)、その後は彼の子孫であるイスラエルの12部族から成る民族全体、あるいはその民族から成る国家を指す用語としても使われていることがわかりました。

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 今回は「旧約聖書における『イスラエル』の意味」の続きとして、「イスラエルの地」や「イスラエルの神」といった表現に着目して後、旧約聖書の中では最も論争があると思われるイザヤ書49:3における「イスラエル」の意味について考察してみたいと思います。

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