軌跡と覚書

神学と文学を追いかけて

私の読書(11)遠藤周作『走馬燈』─沼地に流れた血を追って

遠藤周作に『走馬燈─その人たちの人生─』というエッセイ集がある。裏表紙には次のような紹介文が添えられている。

日本人として初めてエルサレムを訪れたペドロ岐部、贋の大使として渡欧し、ローマ法王に謁見した支倉常長、そして多くの名もない殉教者たち──日本にはキリスト教の伝統はないと信じられながら、実際は四百年にわたる栄光と苦難の歴史が秘められている。日本人でありながらイエスと関わり、劇的な運命をたどった人々を、そのゆかりの地に赴いて回想した異色のエッセー。

続きを読む

『沈黙』再考──遠藤文学の「頂点」かつ「再出発点」

f:id:balien:20181119200418j:plain

  • スコセッシ版『沈黙─サイレンス─』を受けて
  • 『沈黙』執筆時の遠藤周作
  • 「頂点」としての『沈黙』─「再出発点」としての『沈黙』
  • 日本宣教から見た『沈黙』の問題に関する遠藤の思想
    • 1.遠藤本人と「日本沼地論」
    • 2.ロドリゴの棄教について
    • 3.遠藤の「弱者の救い」探求の道のり
  • 結論

また雑然とした記事になりますが、最近もう一度『沈黙』について考える機会があったので、17,000字超えの長文になってしまいましたが、再びこの小説について取り組んでみました。

※本記事には遠藤周作の『沈黙』ほか、同じく遠藤の小説『侍』や、戯曲『黄金の国』に関するネタバレが含まれております。

続きを読む

続々・ディスペンセーション主義Q&A

f:id:balien:20181012220911j:plain

  • Q7:ディスペンセーション主義は異端?
  • Q8:ディスペンセーション主義と「行いによる救い」
  • Q9:ディスペンセーション主義と千年王国
    • 補足:ディスペンセーション主義と千年期前再臨説
  • Q10:ディスペンセーション主義と携挙
続きを読む

カトリック者・遠藤周作─書評 兼子盾夫『遠藤周作による象徴と隠喩と否定の道』

f:id:balien:20181017215438j:plain

  • はじめに
  • 兼子氏の『深い河』論
  • 兼子氏の『死海のほとり』論
    • 無力なイエスとその復活
    • 遠藤的〈母なるイエス〉像を巡る問題
    • 荒野の宗教から愛の宗教へのシフト
  • 理解されなかった遠藤文学
  • おわりに

この2018年10月に出版された兼子盾夫『遠藤周作による象徴と隠喩と否定の道』(キリスト新聞社)を早速手に入れ、読んでみた。文学に関する論文集では久しぶりに「楽しい」読書体験が得られたので、気の向くままに書評という形でまとめてみたものである。

続きを読む