軌跡と覚書

神学と文学を追いかけて

聖書の物語と契約(5)主の日・契約の成就・被造世界の回復

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前回:王国の滅亡と契約に基づく希望

 前回、ダビデ契約の成就──メシアの到来と彼の王国の確立──において、それまでの諸契約の成就、そして被造世界の回復がもたらされることを見た。この契約の成就と被造世界の回復と密接に関係しているのが主の日である。預言書で幾度も登場するこの概念は、聖書的契約を考える上で絶対に外すことができない、重要なものとなっている。

 これから新しい契約を理解するためにも、主の日について考えておかなければならない。なぜなら、主の日において(またはその後で)実現する契約の成就と被造世界の回復は、新しい契約を通して実現するからだ。今回、なるべく包括的に主の日について見ていくことで、次回から新しい契約を取り上げるための準備運動としたい。

  • 【主】の日について
  • 【主】の日の特徴
    • A) 神ご自身が特別な形で介入される日
    • B) 神が地上のすべての民に対して裁きを下される日
    • C) イスラエルに契約違反への最終的な裁きが下される日
    • D) イスラエルに敵対する諸国民が裁かれる日
    • E) 裁きには仲介者も用いられる
    • F) 裁きの影響は被造世界全体に及ぶ
    • G) 【主】の日は差し迫っている
    • H) 裁きを通した祝福がある
  • 【主】の日・契約の成就・被造世界の回復
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聖書の物語と契約(4)王国の滅亡と契約に基づく希望

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前回:ダビデの王国とダビデ契約

 旧約聖書、特に預言書を読めば読むほど呑み込めてきたのが、前回紹介したダビデ契約の大切さである。この契約が保証している希望の大きさというのは、圧倒的だ。その希望は、明確に「メシア待望」に繋がっている*1

 今回は、ダビデ王朝の興亡を概観しながら、ダビデ契約に基づく希望を見ていく。そして次回は、預言書の一大テーマである「主の日」を扱いたいと考えている。この2つのテーマを見ていくことは、旧約の中で大きく輝く新しい契約の希望を噛みしめるための下ごしらえになると思う。

  • 王国の滅亡と契約に基づく希望

*1:W・ブルッゲマン『旧約聖書神学用語辞典──響き合う信仰』小友聡・左近豊監訳(日本キリスト教団出版局、2015年)323頁。

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聖書の物語と契約(3)ダビデの王国とダビデ契約

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前回:アブラハム契約とモーセ契約

 聖書に出て来る有名な「契約」について、その契約が書かれている箇所を前後の文脈をふまえて学ぶということには、恥ずかしながらそれほど力を入れてこなかった。サムエル記第二7章および歴代誌第一17章に出て来る「ダビデ契約」をそのように学んだのも、聖書的契約に関心を持ち始めてからさらに後になってのことである。

 だから、ダビデ契約とアブラハム契約、モーセ契約との関係というのは、それほど立体的には見えていなかった。そして、ダビデ契約というのが聖書においていかに重要な概念であるかということも、あまり呑み込めていなかった。

 今もさほど分かってはいないと思うが、それでも前に比べたら、ダビデ契約の大切さが実感できるようになってきたと思う。そんな今の理解を、ここでお分かちさせていただきたい。

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聖書の物語と契約(2)アブラハム契約とモーセ契約

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前回:創造から洪水まで

 私がこれまで聖書を教わってきた中では、神の計画におけるアブラハム契約の重要性がかなり強調されてきた。その重要性は、創世記3:15における「女の子孫」の約束との関わりも考えるうちに、心の中でますます大きくなってきている。

 しかし、モーセ契約とアブラハム契約の関わり、そして神の計画におけるモーセ契約の役割や重要性といったものは捉えられていなかった。今でも十分に理解できているとは言えない。それでも、特にモーセ五書全体を見通す中で、徐々にこの契約とそこに含まれるモーセの律法に与えられている役割の大きさが見えてきたと思う。本稿では、アブラハム契約とモーセ契約をセットで扱うことで、両者の重要性と神の計画における役割について、私が現在理解できていることをご紹介したい。

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