軌跡と覚書

神学と文学を追いかけて

終末論についての覚書(1)終末論の定義

※本記事は以下のnote記事からの転載です。

終末論についての覚書(1) 終末論の定義|balien|note

はじめに

 最初に個人的な話をさせていただきますと,私が「聖書は神のことばである」という福音主義に向かったひとつのきっかけは,イエス・キリストの終末論に関するメッセージを聞いたことでした。それまで再臨のようなテーマでメッセージを聞いたことがなかったので,衝撃的でした。それ以来,私にとって終末論は神学の勉強の中心的テーマとなっています。これまでnoteで触れてきたイスラエル論やディスペンセーション主義,聖書解釈学に関する学びも,基本的には終末論の探求の土台です。そして,終末論こそキリスト教信仰の中心であるという確信は,聖書の学びを重ねるにつれて深まっています。

 ここでは,終末論について色々と調べてきたこと──具体的には,終末論についての諸見解の特徴,またディスペンセーション主義終末論がキリスト教界に及ぼした影響──について,大雑把にではありますが,覚書として残しておきたいと思います。まだまだ勉強している最中ですので,いずれ各テーマについての詳細をまとめていきたいと考えています。

トピック

終末論の定義

 歴史神学者フスト・ゴンサレスは,終末論(eschatology)を以下のように定義します([]は引用者による補足)。

〔英語の「エスカトロジー」は〕ギリシャ語で最後の事柄を意味する「エスカタ」と論説,教理,言葉などを意味する「ロゴス」に由来し,「終わりの事柄」に関する教理を指す.終末論は,イエスの再臨,最後の審判,永遠の命,千年王国,天への拉致[携挙],死人の復活などを取り扱うことが多い.(ゴンサレス 2010:122)

ゴンサレスは終末論で取り扱う内容について宇宙論的な事柄を列挙していますが,彼自身「など」と補足しているように,終末論は実際にはさらに広い範囲の事項も含みます。
 続いて,組織神学者ミラード・J・エリクソンによる定義を確認します。

その後の由来が示すように,終末論(eschatology)とは伝統的に,最後の事柄に関する研究を意味してきた。したがって歴史の完了,神のこの世での働きの完成に関する諸問題を取り扱うものである。また多くの場合,文字通り,神学研究で考察される最終の話題である。(エリクソン 2006:351)

また,彼は別の箇所でこのように指摘しています。

終末論を語る場合,個人的終末論と宇宙論的終末論とを,すなわち個人の未来に控えている体験と,人類の未来に,ひいては全被造物の未来に控えている体験とを区別する必要がある。前者は死ぬとき各自に起こる。後者はすべての人に同時発生的に,宇宙規模の出来事と関連して,具体的にはキリストの再臨と関連して起こる。(エリクソン 2006:370)

 したがって,終末論とは,個人的終末論および宇宙論的終末論とを取り扱う組織神学の一分野であるということができます。以降のノートでは,キリストの再臨を中心とした宇宙論的終末論に関する覚書をまとめていく予定です。

引用・参考文献

  1. エリクソン,ミラード・J『キリスト教神学』第4巻,森谷正志訳,宇田進監修(いのちのことば社,2006年)
  2. ゴンサレス,フスト『キリスト教神学基本用語集』鈴木浩訳(教文館,2010年)
  3. マクグラスアリスター・E『キリスト教神学入門』神代真砂実訳(教文館,2002年)
  4. リンゼル,ハロルド=チャールズ・ウッドブリッジ『聖書教理ハンドブック』山口昇訳(いのちのことば社,改訂新版,1992年)