Michael Rydelnik and Edwin Blum, eds. The Moody Handbook of Messianic Prophecy: Studies and Expositions of the Messiah in the Old Testament. Chicago: Moody, 2019. Hardcover: 1440 pages.
ムーディ聖書学院の教授陣がメインになって編集/執筆しているMoody Handbookシリーズの最新刊!伝統的にメシア預言とされる旧約テキストへの取り組み方や、各預言の解釈が扱われている。
編者は上記学院のユダヤ学教授であるMichael Rydelnik*1 と、ダラス神学校の元新約神学教授のEdwin Blum。BlumはThe Expositor's Bible Commentary(旧版)の第一・第二ペテロおよびユダの注解書著者や、Holman Christian Standard Bible(HCSB)翻訳チームの編集長としても知られている。
一昨年くらいから出る出ると聞いてて中々出なかったのだが、先月にやっと出版された。が、ハードカバーで1440ページという鈍器級の一冊で、時間がかかっていたのも納得。
イントロダクション抜きで100章もある。最初の15章はメシア預言へのアプローチや予備知識を扱った総論的なセクションで、残り85章は各テキストを総論/各論的に扱っている。ただし、各章の長さは平均10ページくらいなので、意外とサクサク読める。
総論のセクションには編者Rydelnik自身の著作*2 からの抜粋がいくつか含まれている。
Rydelnikが担当したセクションでは、以前の著作や本書序盤の随所で強調しているように(そして、謝辞にもあるように)、故John Sailhamerの「ヘブル語聖書(旧約聖書)はメシア待望を基調としている」という考えの影響が色濃く反映されている。この影響はイスラエル聖書大学教授のSeth Postelの担当セクションにも見られるし、第2章はSailhamerがJournal of the Evangelical Theological Societyに発表した論文*3 そのものの再掲である。
執筆陣としては、意外なところでは、旧約学者のDaniel Blockが参加している(申17:14–20; エゼ17:22–24; 34:20–31担当)。
他の意外どころでは、前述したイスラエル聖書大学のPostelが序盤で2章(旧約中の旧約引用について; 旧約の予型論について)、各論部分で4章(創3:15; 民24:5–19, 15–19; 詩篇のメシア論総論; 詩16篇; 45篇)を担当している。
また、Messianic Jewish Alliance of AmericaのLarry Feldmanがミカ2:12–13を担当しているのも嬉しかった。
有名どころのメシアニック・ジューとしては、The Expositor's Bible Commentary改訂版でエレミヤ書を担当したことで知られるMichael Brownも、序盤で2章(ラビ文書におけるメシア; 中世ユダヤ教文書におけるメシア)、各論部分で3章(イザ52:13–53:12; エレ23:5–6; ゼカ6:9–15)を担当している。
他にもWalter Kaiser Jr.(2サム7章担当)、Eugene Merrill(1歴17章; 詩89篇担当)、Randall Price(イザ2:2–4およびミカ4:1–5; イザ4:2; イザ28:16; エゼ37:15–28; ゼカ13:7–9担当)といったお馴染の面々や、当ブログご贔屓(笑)のMichael Vlach(イザ24:21–23担当)も名を連ねている。
全体としては、前述のRydelnikによるメシア預言についての著作の拡張版といった感じである。旧約のほとんどの書が総論的または各論的に扱われているので、旧約を学ぶ時には注解書類と一緒に手元にあると嬉しい感じだ。
David L. Turner. Interpreting the Gospels and Acts. Handbook for New Testament Exegesis. Grand Rapids: Kregel, 2019. Paperback: 368 pages.
評判の良いKregel社のHNTE (Handbook for New Testament Exegesis)シリーズの最新刊。これまでパウロ書簡(John D. Harvey)、ヘブル書〜ユダ書までの公同書簡(Herbert W. Bateman IV)、黙示録(C. Marvin Pate)が出ていたので、これでシリーズが揃ったことになる。
著者のDavid L. Turnerは、Grand Rapids Theological Seminaryの元新約聖書学教授で、BECNT(Baker Exegetical Commentary on the New Testament)シリーズやCBC(Cornerstone Biblical Commentary)シリーズでマタイの福音書を担当したことでも知られている。
内容としては、シリーズの他の書と同じく、福音書&使徒行伝のジャンル、構成、歴史的背景、解釈手法などが幅広く扱われている。
本シリーズの特徴のひとつは、最後に著者自身による実際の釈義&説教準備の実践例が掲載されていることである。本書では、マルコ4:1–20とヨハ1:1–18が取り上げられている。ひとつは使徒の働きから取り上げてほしかったところではある。だが、たとえば「御国の奥義」について取り上げる上で、珍しくマタイではなくマルコを選んでいるところには好感が持てるし、ヨハネの序文は非常に複雑かつ重要なので、福音書を読む者にとっては、このチョイスも嬉しいものであると思う。
今、自分もマルコの福音書に取り組んでいるところだが、本書には度々助けられている。先のThe Moody Handbook of Messianic Prophecyと合わせて、手に入れて良かったと心から思っている一冊である。
Arnold G. Fruchtenbaum. The Feast and Fasts of Israel: Their Historic and Prophetic Significance. San Antonio, TX: Ariel Ministries, 2019. Hardcover: 445 pages.
Arnold G. Fruchtenbaum. Ruach HaKodesh: God the Holy Spirit: Messianic Jewish Perspectives on Pneumatology. Come and See. Volume 4. San Antonio, TX: Ariel Ministries, 2019. Paperback: 214 pages.
こちらの2冊はまだ入手していないが、お馴染Arnold G. Fruchtenbaumの近刊および新刊である。
今年5月に出版されたThe Feast and Fasts of Israelは、レビ記23章に掲載されている祭りや、中間時代以降の祭りなどを包括的に解説しているものだそうだ。彼のレビ記23章解釈などは詳しい形で学びたいと思っているので、近々入手したいと考えている。
10月に出たばかりのRuach HaKodeshは、著者によるMessianic Bible Studyシリーズを、組織神学の各分野ごとに再編して出版しているCome and Seeシリーズの最新刊。これまで聖書論、神論、キリスト論について出版されており、今回は聖霊論である。
一応これまでの3巻は持っているのだが、そもそもMessianic Bible Studyシリーズは入手済みで、基本的には再掲ものなのでどうしようかな…と悩んでいるところ。
ただ、〈保守的聖書信仰およびディスペンセーショナリズムに立つメシアニック・ジューの視点からの組織神学〉という意味では、本シリーズは貴重であると思う。
他にも、アリエル・ミニストリーズ関連の情報をいくつか。
2ヶ月に1回更新される同団体の祈祷課題は、毎回チェックさせていただいている。今月分を確認したところ、Fruchtenbaumによる使徒の働きの注解書が現在脚注の編集中であり、間もなく完成だそうだ(編集部Chrstiane Jurik氏のページを参照)。
また、これは以前のニュースレターから言及されていたが、現在アリエル・ミニストリーズのスタッフがスタディ・バイブル(the Ariel Study Bible)の執筆に取り組んでいるらしい(!)。素晴らしい学びのリソースになるものと期待される。
最後に、来年の刊行情報をひとつ。
J. Paul Tanner. Daniel. Evangelical Exegetical Commentary. Lexham Press, forthcoming. Hardcover: 864 pages.
Lexham Pressの公式ページではアナウンスを見つけられなかったが、Amazonを覗いていたら予約が始まっていた。今のところ、ハードカバー版が来年3月刊行予定らしい。 EEC(Evangelical Exegetical Commentary)シリーズは、聖書研究アプリのLogos上で使われることを想定した注解書シリーズである。なので、Logs版も同時期に(またはもっと早く?)出るのだろう。しかしこのシリーズ、釈義的に詳しい注解書シリーズとして、中々評判が良い。
著者J. Paul Tannerは、主に東南アジアや中東で聖書/神学教育を提供することを目的としている団体BEE Worldの中東担当ディレクターである。ダニエル書、黙示録、知恵文学などについて、Journal of the Evangelical Theological SocietyやBibliotheca Sacraなどの論文誌で多数の論文を発表している。
Tanner自身のホームページでは、発表論文や、BEE Worldの授業で使われている資料などを閲覧できる。どれも大変勉強になる資料である。
同ページで「ダニエル書研究」という独立した項目が設けられていることから分かるように、Tannerはダニエル書に特別な関心を抱いてきたようだ。(最初に紹介したThe Moody Handbook of Messianic Prophecyでもダニ7:13–27を担当している。)
彼は自身をプログレッシヴ・ディスペンセーショナリストに位置づけており、ダニエル書の解釈も、Gleason Archerの注解書(The Expositor's Bible Commentary旧版)や、Stephen Millerの注解書(New American Commentary)に見られるような、未来主義に立つものとなっている。(Tanner自身、ArcherとMillerの注解書を高く評価している。)
ホームページでBEE Worldの授業のテキストであるダニエル書注解書が閲覧できるが、自分でダニエル書に取り組む際には、必ずチェックする1冊だ。
その彼がEECシリーズでダニエル書を担当するということでかなり期待していたので、3月が待ちきれないくらい楽しみだ!
未来主義に立つダニエル書注解としては、既に触れたArcherのEBC旧版やMillerのNACに加えて、Everyman's Bible CommentaryシリーズのJohn Whitcombによるものや、Zondervanから出ていたLeon Woodによるものなどがある。
最近ではPaul Benwareによる注解書がDispensational Publishing Houseより"ダニエル書の釈義的・ディスペンセーション主義的注解書"と銘打って出版されたが、正直言うと、「釈義的」面ではArcherやMillerにも及ばないと思えるようなもので、がっかりした覚えがある。
今度のTannerによる注解書は、864ページもあるとのことで、ダニエル書の保守的・未来主義的解釈を提示する注解書の決定版になるのではないかと思う。ダニエル書は聖書的終末論を論じる上で非常に重要なので、要チェックの一冊だ。